ADHD・ASD (発達障害) とは?
基礎知識と支援。

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 ADHD・ASDを中心とした発達障害の基本的な情報をまとめ、大人の発達障害にはどういった支援(就労支援など)があるのかについて書きました。
 また、発達障害の疑いがある人が正しい診断を受けるために病院を受診する際の注意点についても書きました。

  1. ADHD・ASD以外の発達障害については、ほとんど触れていませんが、別記事でいずれまとめようと思います。

1. 発達障害とは

  • 発達障害の定義は難しいのですが、簡単に言うと、「脳の働きに生まれつきの特性があり、得意不得意が激しく、そのために社会や生活の中で、本人の努力だけではどうしようもない困難を抱えている人」といえます。
  • 例えば、「頭は良く、仕事もでき、コミュケーションも得意なのに、読み書きができない」という人がいます。それは「発達性ディスクレシア」という発達障害が原因の可能性があります。
  • その一方で、「読み書きは得意だけれども、他人の発言や意図が理解できない、マルチタスクが非常に苦手」という人もいます。それらが原因で仕事や生活に大きな支障をきたすほどである場合、それはADHDやASDといった発達障害が原因である可能性があります。
  • 発達障害は、先天性で、遺伝的な要因が最も大きいとされています。育て方やしつけが原因ではありません。
    • 例えば、ADHDの双生児研究では、発病一致率は一卵性双生児で50~80%、二卵性双生児で30~40%とされています。ASDでも類似の研究結果が報告されています。
    • 脳の特定の領域が非発達障害者に比べて小さく、活性が低下していることも複数の研究で報告されています。
  • 発達障害の症状の多くは低年齢から発現しています。しかし、周囲からは「本人の性格」あるいは「努力不足」として見過ごされ、成人になってから発達障害と診断されるケースも少なくありません。
  • 無理に周囲に合わせようとした結果、適応障害やうつ病、不安症などを併発してしまうケース (二次障害) も多いです。また、感覚過敏を伴う人も多く、音や光、匂いに悩まされる人もいます。
  • また上記の二次障害までに至らなくても、常に疲労感を感じながら生活をしている人も多くいます
  • 発達障害自体は知的障害ではありませんが、知的障害を伴う人もいます。

 以下にADHDとASDについて簡単にまとめました。
 ただし、両者を併発している場合も多く、症状の現れ方は人によっても違うため、全てが当てはまるとは限りません。

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2. ADHDとは

  • ADHD(Attention-deficit hyperactivity disorder:注意欠陥・多動性障害)は、「不注意、多動性、衝動性」を特徴とします。
  • 具体的には、「気をつけていてもケアレスミスが多い」、「物の紛失・忘れ物が多い」、「じっとしていることができない」、「過度に活動的になりすぎてしまう」などの症状があります。
  • 不注意優勢型、多動性・衝動性優勢型、混合型の3つのタイプがあり、特に不注意優先型ADHDは多動性・衝動性があまり強くないため、周囲からは症状が見えにくく、ADHDであるとわかるのが遅れることも多いです。(以前は、多動性のないものをADDと分類していましたが、現在ではADDという名称は用いられず、不注意優先型ADHDに名称が統一されています。)
  • ドーパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質に関連する機能に障害があるという仮説が有力です。(別記事「ADHDの脳科学と薬」を参照。)
  • ADHDの症状を抑えるための薬はありますが、完全に症状を抑えられるわけではなく、また人によっても効果の現れ方に違いがあります。

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3. ASDとは

  • ASD(Autism Spectrum Disorder:自閉症スペクトラム障害)は「社会性の障害」、「コミュニケーションの障害」、「強いこだわり、限られた興味」、「感覚の過敏もしくは鈍感」を特徴とします。
  • 具体的には「暗黙の了解への理解が難しい」、「人の表情を読み取るのが苦手」、「変化することに臨機応変に対応できない」といった困難を伴うことが多いです。
  • 以前はPDD(広汎性発達障害)、高機能自閉症といった分類もありましたが、現在では診断名がASDに統一され、アスペルガー症候群もASDに含まれます。
  • 小児ASDに伴う「易刺激性 (かんしゃく、攻撃性、自傷行為など)」を抑制するための薬は存在しますが、ASDの中核症状に対する薬は残念ながら現在ありません。
  • そのため、SST (ソーシャルスキルトレーニング) などの認知行動療法が中心になります。

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4. 発達障害の疑いがある場合

・適切な診断を受けるための病院選択

 自分が発達障害かもしれないと思って精神科や心療内科を受診しても、「発達障害については専門じゃないから…」と言われたり、「それぐらい誰だってありますよ。」と流されてしまうケースもあります。

 発達障害の疑いがあるのならば、きちんとした検査を受けた上で、発達障害に詳しい医師の診断を受けることが重要です。
 そのためには、例えば、発達障害特化型の病院口コミサイト「はつナビ」などを利用して、発達障害に詳しい医師のいる病院を探しましょう。

 ただし、「はつナビ」はあくまで口コミなので、必ずしも正しい情報とは限りませんし、情報が古い場合もあります。良さそうな病院があれば、発達障害に詳しい医師がいるかどうか直接電話で確認してみるのが確実でしょう。

・臨床心理士との連携が取れている病院がベター

 発達障害を診断するためには、臨床心理士の聞き取りや検査が重要になってきます。
 そのため、臨床心理士がいる病院を受診することをお勧めします。病院で臨床心理士によるカウンセリングを実施している所が特に良いですね。

  1. 病院には臨床心理士がいなくても、外部のカウンセリングオフィスと連携している病院もあります。

・受診の前にセルフチェックしてみよう

 このサイトにもADHDのセルフ・チェックリストおよびASDのセルフ・チェックリストを載せておりますので、一度セルフチェックをしてみましょう。

  1. このサイトだけでなく、「ADHD チェックリスト」「ASD チェックリスト」などで検索すると、チェックリストが出て来ると思います。

 セルフチェックだけでは、自分が発達障害かどうかは判断できませんが、セルフチェックをすることで、自分がどのような困りごとを抱えているかがわかりやすくなり、受診時に自分の症状を伝えやすくなると思います。
 現在特に困っている症状はチェックリストだけではなく、あらかじめ文章で整理しておくと、より良いかもしれません。

 また、発達障害の診断には、幼少期のエピソードも重要ですので、幼少期のエピソードも整理しておきましょう。

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5. 発達障害と診断されたら

 発達障害自体は完治するものではありません。しかし、成長とともに症状が目立たなくなる人もいますし、自分に合った環境や周囲のサポートにより、本人もそれを「障害」とは感じずに、むしろ「強み」として人並み以上の力を発揮して社会に貢献できる人もいます。

 一方で、多くの発達障害者が、周囲から理解をなかなか得られず、その特性ゆえに「生きづらさ」を感じていることも事実です。

 もしあなたが発達障害と診断されたのなら、大事なのは自分自身の得意不得意を把握し、「得意」をどう活かし、「不得意」をどう工夫して補うかということです。そしてあなたの力を発揮するために、どのような環境とサポートが必要かしっかり考えましょう。

 自分の「得意不得意」の分析や必要なサポートの検討などは、一人で考えるよりも、発達障害に詳しい専門家と一緒に考えることをお勧めします。

 例えば、発達障害支援センター発達障害に詳しいカウンセラーに相談するのも一つの手です。

・就職や復職については発達障害支援サービスを利用。

 また、就職や復職について悩んでいるのならば、地域障害者職業センターで支援を受けることもできます。

 ただし、発達障害支援センターや地域障害者職業センターなどの公的機関は、予約が埋まっていて、なかなか相談に行けない場合もあります。また、自分の住んでいる地域の施設しか利用できないので、融通が効かないという難点もあります。

 より個々人に適した支援を受けて就職・復職を目指すのならば、発達障害専門の就労移行支援【リンクビー】や株式会社Kaien等の民間の就労支援サービスを利用するのがオススメです。
 これら民間企業も、(収入状況にもよりますが) 無料で利用できる場合も多く、

  • 自分の得意・不得意を知り、具体的な職業適性を把握する。
  • コミュニケーションスキルを身につける。
  • 入社後の定着支援。

 などの支援を行ってくれます。

 自分に合った仕事がわからない、コミュニケーションに自身がない、安定して長く働けるか不安があるなどの方は是非こういったサービスを利用しましょう。

・人によっては障害者手帳の取得も

 社会生活における支障の程度や症状などに応じて、発達障害を理由に障害者手帳を取得できる場合もあります。

 先ほど紹介した株式会社Kaienのサイトに障害者手帳について詳しいページがありますので、参考にして下さい。→発達障害と障害者手帳

    

 もしあなた自身が発達障害ではなくても、周りに発達障害と診断された人がいて、サポートを必要としているならば、どのようなサポートが必要か耳を傾けて、どうか力になってあげて下さい。

 「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現」(発達障害支援法第一章より)が達成されることを心より願います。

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    1. Stephen Brian Sulkes(2016)”https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/19-小児科/学習障害および発達障害/注意欠如・多動症(add,adhd)”(参照:2020年2月)
    2. Stephen Brian Sulkes(2016)”https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/19-小児科/学習障害および発達障害/自閉スペクトラム症”(参照:2020年2月)
    3. 林丁哲(2015)『これでわかる大人の発達障害』成美堂出版
    4. ADHDの診断・治療指針に関する研究会・齋藤万比古(2016)『注意欠如・多動症ーADHDガイドラインの診断・治療ガイドライン 第4版』じほう
    5. Hallmayer, J., Cleveland, S., Torres, A., Phillips, J., Cohen, B., Torigoe, T., Miller, J., Fedele, A., Collins, J., Smith, K., Lotspeich, L., Croen, L. A., Ozonoff, S., Lajonchere, C., Grether, J. K., & Risch, N. (2011). Genetic heritability and shared environmental factors among twin pairs with autism. Archives of General Psychiatry, 68(11), 1095–1102. 
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